しょちぴるり
第2部-第1話
望まれる。
叶える。
それが、自分。
それが、神という、自分。
疑問もなく、不満もなく。
そう、思いこむようにしていた、それだけなのかもしれなくても。
望まれたら、叶えるのが自分。
望まれることを、叶えるのが神。
だから、訊いた。
肉塊にしか見えなかったけれど、命の気配があったから。
――しんでるの?
訊いた。
ひゅう、と、風が答えた。
だから、重ねて訊いた。
――いたい?
ひゅう、と、風が答えた。
肉塊だ。
咽喉も潰れているだろう。
それでも気にすることなく、訊いた。
――いきたい?
そう訊いた、瞬間に。
尽きかけていた炎が、ごうと音を立て、息を吹き返したのが、見えた。
それは、叫んだ。
いきたい。
逝きたい。
行きたい。
生きたい。
叫んで、それから。
濁っていた瞳が、清明な光を宿して、初めて自分を見た。
(のぞまれるままに、わたしは、いきたい)
(あなたは、わたしに、なにをのぞむ)
初めてだった。
願いを叶える、望まれる、それが神。
それが、これまでの生き方。
その自分に、望みを問われるのは、これが初めての――
――…………………さわっても、いい?
訊いた。
訊いたけれど、答えが返るより先に、くちびるを当てた。
血泡を吹くくちびるに、くちびるを押しつけて。
生吹を、吹き込んだ。