「………」

求められた内容と、笑顔の涼しさの落差に、カイトはしばし瞳を見張って固まった。

がくぽは大人しく、カイトの返事を待っている。

しょちぴるり

第2部-第21話

「………えと」

戸惑いながらも、カイトはがくぽの膝から下りた。

緑が萌えだしたばかりの地面に手を突き、獣のような四つん這いとなったうえで、がくぽへ殊更に尻を突き出す。

「………こ、ぉ?」

「ええ、ありがとうございます」

「………っ」

礼を言われても、困る。

カイトは真っ赤になって前を向き、あまりに涼しいがくぽの笑顔から視線を逸らした。

がくぽのほうは浮く腰骨を目安に、カイトの体を掴んで固定すると、自分へと突き出された場所に顔を埋める。

息が吹きかかったことで驚きに揺れた体をしっかりと抑えこんだうえで、昨日の名残りで赤く熟れている場所に舌を伸ばした。

「ゃっ、あ………?!がく、がくぽっ?!」

「ん……」

ぐらりと傾いで四つん這いが崩れそうになったカイトに構わず、がくぽは恍惚とした表情で、うねる襞を舐める。

淫蕩そのものの表情だったが、衝撃に揺らぐカイトには振り返る余力もなく、ひたすらに前を向いて震えていた。

「ん……」

「ぁ、がく………っぁんっ、あ………ぁあっ、ウソ……ウソ…………っぁあんっ」

揺れる腰を逃がすことなく、がくぽは襞の表面にねっとりと舌を這わせ、うねりに合わせて中へと押しこむ。垂らす唾液が肌を伝って張りつめるカイトのものを濡らし、先走りとともに地面へとこぼれた。

「ゃ、ぁ………っふ、がく………っ」

とうとう体を支えきれず、カイトは腕を崩して地面に落ちた。

それでもがくぽはしつこく、赤く熟れた場所を舐めほどき、いたたまれない水音を響かせながら指を呑みこませて、少しでもそこがやわらかくなるようにと愛撫を施す。

「ん………っんんぅ………っふ、ぁ、もぉ………っ」

「っ」

一際大きく痙攣したカイトに、がくぽは咄嗟に手を前にやった。

予想したとおり、触れられることもないままに限界に達したカイトの性器から、とろりとした体液が迸る。

いくらかは地面に散らしたものの、ある程度は受け止めて、がくぽは機嫌よく手を戻した。

「ふぁ………っ」

ちゅるりと、背後で響いた音がなにをしているのか、見なくても予想がついたカイトは、羞恥が極まって涙をこぼした。

昨日も散々、がくぽはカイトのものに口をつけて、吸い上げた。

もう出ない、いたいと泣いて嘆願して、ようやく諦めてくれたが、これはそもそも、そうも大量に飲むものだろうかという疑念がある。

それとも、そんなにもおいしいものなのか――

「………」

「………」

潤んだ瞳で振り返ったカイトは、予想通り、粘つく指を機嫌よく舐めるがくぽの姿に、少しばかり脱力した。

それから、視線を移動させる。

着物に包まれたままの、場所。

それでもすでに、熱く滾っていることが見て取れる。

「……………がくぽ」

「はい」

呼んだカイトに、がくぽの返事は機嫌が良かった。

力が入らず地面に突っ伏したままのカイトは、重い腕を繰ってがくぽの下半身を指差す。

「……………なめさせて?」

「………」

強請ると、がくぽの動きが止まった。表情まで固まる。

カイトはそんな大層なことを言ったつもりはない――がくぽが舐めるのなら、自分も舐めていいだろうという。

「………がくぽ」

「………それはまた、今度」

「なにそ………っぁんっ?!」

抗議しようとしたところで、差し入れられた指が大きく襞を割り広げる。

びくんと、大きく震えて強張ったカイトに、がくぽはわずかに考えこんだ。

さすがに連日、ここに受け入れさせるのは無理がある。そうでなくとも、そもそもが男を受け入れる場所ではなく、しかもがくぽのものは男として優秀な部類に入る。

「………カイト殿、少し……」

「ん…っ?」

今度はなにを要求されるのかと、カイトは涙目でがくぽを振り返る。

崩れる体を再び膝に乗せ、横抱きにしたがくぽは、土で汚れたカイトの顔をやさしく拭った。

「……すみません、気を遣うべきでした」

「べつに……んっ」

ある程度の土を払い落としたところで、がくぽは顔に舌を這わせた。手で払いきれないものを丁寧に舐め取って、カイトの顔を元の通り、きれいにする。

カイトは複雑な表情で、がくぽを見つめた。

「口のなか、じゃりじゃりしない……?」

「地方によっては、土を食べる習慣があるのですよ」

「ええ……っっ!」

しらっと吐かれた言葉に、カイトは瞳を見張った。

「人間って、なんでも食べるね………!」

「そうですね」

自然界にある動物で、およそ人間ほど雑食を極めているものもいないだろう。

自覚があるので、がくぽはカイトのその感想を、誤解だともなんとも訂正しなかった。

「まあ、私の故郷では食べませんが」

「え、それじゃ………っや、なに?!」

しらしらと続くがくぽの言葉に振り返ったカイトは、すぐに悲鳴を上げて顔を戻した。

ぴったりとくっつけ合わされたカイトの太ももの狭間に、いつの間にか取り出されたがくぽのものが差し込まれている。

昨日は動揺していてよく見なかったが、自分のものとはわずかに色形が違うような気がする――それが経験の差というものだったが、カイトがそのことに気がつくことはなかった。

ただ、あまりに卑猥な見た目に、慌ててがくぽに縋りつく。

「がくぽ、ちが……っ」

「足を開かないで」

「ゃあっ」

逃げようとした足を押さえられ、内腿に火掻き棒でも押しつけられているような熱がある。

涙目になるカイトをしっかりと抱え、がくぽは安心させるように微笑んだ。

「…求めるにしても、あまり連日いたぶっては、体が持ちません。今日はこれで」

「え、や、なに……なに………?!」

「大丈夫、よくある型です」

「そ、そーな………ひぁっ!」

知らないのをいいことに誑かす言葉を吹きこんだがくぽは、カイトが深く考える前に、体を動かし始めた。

きつく閉じた腿の間を、漲る男のものが行き来する。

「ひ………っゃあ………っ」

ある意味、腹の中に入れられて掻き回されるより、よほどに恥ずかしくていたたまれない。

しかも行き来をするたびに、がくぽのものがカイトのものを掠っていく。舐めほどかれた場所を悪戯に突いていくこともあり、カイトはひどく惑乱して、がくぽに縋りついた。

「カイト…」

入れていないのに、がくぽは気持ちよさそうだ。熱に蕩けた声で、掠れ気味にカイトを呼ぶ。

抱えられているからごく間近にくちびるがあって、耳朶をくすぐりながら、特別な呼び方をされる――それだけで、カイトは極みに達しそうだった。

「んんっぁ………っぁあっ」

「カイト……」

縋りついたカイトを、がくぽはさらにきつく抱きしめて、腰を動かす。

抱えられたまま、カイトは堪えきれずに視線を落とした。

――恥ずかしいから見たくないのに、目がどうしても、腿から突き出すがくぽのものを追ってしまう。

ああこれが、こういうふうに自分の腹の中をと想像までして、さらにいたたまれない気分に陥った。

カイトの肌の白さに、がくぽのものの色はあまりに淫猥に映えて、埋もれて見えなくなることもない。

対する自分のものとも比べて、カイトは腹に突き入れられたときよりもひどく疲労困憊して、極みに達した。

「ぁ………っはぁ………っ」

ぐったりとしてがくぽに懐き、カイトは肌を灼いた体液を眺める。

それを吹き出したものは毒々しいほどの色だったのに、体液はカイトの白い肌に沁みこむような色だ。

ふと思いついて、カイトはがくぽに縋っていた腕を下ろし、自分の肌を撫でた。腹に散ったがくぽのものを指に掬い取ると、止められる前に口に入れる。

「カイト殿っ」

ああ、もうその呼び方なのかと思いながら、カイトはこくりと咽喉を鳴らして呑みこんだ。

「どうしてそうやって」

「よくわかんない」

「………」

慌てるがくぽに、カイトはつぶやいて凭れた。

濡れる肌を撫で、体液を被ったことでわずかに濁り色になった花痣を眺める。

腹の中央に落とされた花痣だけがいやに鮮やかで、カイトのくちびるは知らず、笑みを刷いた。

「………これだけじゃ、味、わかんない」

「カイト殿」

甘える声に、がくぽは眉をひそめた。

「そもそも私は、あなたが食事をするのを、見たことがないのですが……」

「食べられないわけじゃないよ。しないだけ」

「………」

言って、カイトは強請る瞳でがくぽを見つめた。

「………たべてみたい」

「………」

くちびるを引き結んで黙るがくぽに、カイトはとっておきに甘ったれた顔を向けた。

「おねがいきいて、がくぽ?」