「ルーカーちゃぁああんっ!」
「いやあああっ、このおやぢアイドルがあああっ!!」
雄叫びとともに、ミクさんが満面の笑みで勢いよく胸にダイビングしてきて、あたくしは悲鳴を上げた。
愚者の茶番
「ぁあああん、ルカちゃんの胸ぇ♪今日もふかふかぁん」
物凄い勢いで胸に埋まって頬ずりされる。しなやかな指が、逃げる肉を持ち上げて揺すり上げた。
「ぁあんっvvv…って、いい加減にして!!」
一瞬で軽く絶頂へと昇らされてしまい、あたくしは身悶えながらミクさんを引き剥がす。
おそろしいわ、天然アイドル!いつもながら、どこで仕入れてくるの、この超絶テク。
「なんの用なのよ、貴女!」
叫んだけれど、おそらく用なんてない。あたくしの姿を見たら胸を揉みにくるのが、ミクさんというひとだ。
しかし、今日は違った。
「あ、そうそう。用があったんだった」
「え?」
あっさり言われて、思わずマヌケな顔になってしまう。
そのあたくしに、ミクさんは性質のよくないにんまりした笑みを浮かべた。
「あのねー、ルカちゃん。ボクね、ルカちゃんより、ネギが好き☆」
「…っなっ?!」
頭の中が真っ白になった。
なんなの、なんの宣言なのよ?!
呆然とするあたくしに、ミクさんは畳み掛ける。
「あ・の・ねっ!ルカちゃんより、ネギのほうが好きなんだよっ」
「ん、んなななな…っ!!」
二度も言われたわっ!二度も!大事なことだから二度言いました?!
体がわなわなと震える。頭が沸騰した。
「な、なによっ。なによなによなによぉ…っ!!あたくしを見るたびに、どんっなに遠くにいても、胸を揉みにくるくせに…っ」
「ルカちゃん?」
「どうせあたくしの価値なんて胸だけよ!胸しか取り柄がないんだから、そりゃ、ネギにも負けるでしょうよ!でもだからって、そんなことわざわざ宣言しなくったっていいじゃない!あ、あたくしなんて、いつ揉まれてもいいようにバストアップ体操も欠かさないし、マッサージだって怠らないし、洋服だって触り心地のいい生地のものを選んだりしてるのに!貴女ってひとは、貴女ってひとはっ」
なによ、別に大したことなんてないわ。もともとわかっていたことを宣言されただけなんだもの!
涙を滲ませるあたくしに、ミクさんは悪魔の笑みを浮かべた。ぎょっとする間もなく、再び胸にダイブされる。
「もぉおおおお!ルカちゃんってなんでそんな、ボクのこと、全力でアイシテルかなあああ!!」
「ななな、なにを言ってるのよ!別にミクさんのことなんて愛してないわよ!好きなんかじゃないわよ!!」
叫んだあたくしに、ミクさんは声高く笑った。首が伸びて、頬にキスされる。
「ルカちゃんの気持ちは確かに受け取ったYO☆」
「なんの話よ?!ひとの話をちゃんと聞きなさいったら!!」
「にゃはははははっ!!」
笑い転げるミクさんが種明かしをしたのは、それから十分後。