とてもつごうのよいぼくらは、
きょうのおやつはミルフィユとモンブラン。
「まあ、つまりな、マスターよ、カクカクシカジカマルサンカクバツイチシカク…そういうわけで、こういうおやつスタイルに落ち着いたんだ」
カイトはひと口に切りわけたミルフィユを、となりに座るがくぽの口へ運びつつ、そう説いた。
それで、そういう説明をされた側だ。
マスター:八船-やつふね-だ。
「うん。『かくかくしかじかまるさんかくばつしかく』?で、『そういうわけ』?っていわれても。きっとすごく説明がむつかしい過程だったのか、あるいは説明するほどでもないことなのか、もしくは『説明』がそもそもめんどうくさいってだけなのか、なにがなんだか、さっぱりわからない」
首を捻りまわし、しかしすぐ、食卓のお向かいに座るがくぽとカイト、自分のロイドふたりへ顔を向ける。
今日のおやつは、ケーキだ。ねだられて、仕事帰り、八船が買って来た。
がくぽのまえにはミルフィユがあり、カイトのまえにはモンブランがある。
カイトはがくぽへミルフィユを給餌し、つまり、フォークでひと口ぶんに切りわけては、がくぽの口へ運び、あいまにモンブランを掬っては、自分の口に運ぶ。
なかなか、いそがしそうだ。これで説明の手間までは、とても負えまい。なにしろ、KAITOであるし――
八船は、がくぽのまえ、ミルフィユの載った皿のすぐ傍らに用意した、未使用のデザート・フォークを指差した。
「さっぱり理由はわからないけど、カイトががくぽにおやつを食べさせたくて、がくぽもカイトに食べさせてほしいっていうなら、いい。いいけど、なんでがくぽは、食べさせてもらうばっかりなんだろう。食べさせっこじゃ、だめな理由はなに?マスターは、そっちについての説明こそ、聞きたい」
責める、なじる、からかう、どれでもなく、純然と疑問だから疑問だと呈した八船に、がくぽが顔を向けた。
もぐもぐ、今まさに口に突っこまれたミルフィユを、もぐもぐ――
しつけの賜物といおうか、礼儀正しさの発露といおうか、単にまぬけの『ま』といおうか。
なんともいえない間がすこし空いて、がくぽは呑みこみついでにこくりと頷いた。片手を上げると指し示されたデザート・フォークを掴み、八船をますぐに見つめる。
「その発想はありませんでした、マスター。――盗用しても?」
まじめな、いっさい感情が刷かれないために、そうと信じるしかないまじめさで返したがくぽへ、八船はふるえあがった。ぶるぶるぶると、首をよこに振る。
「がくぽ、いいかた…いい方っ!『盗用』は、やめよう?!家族なんだし、こんな発想くらい、シェアするのはなんでもないことなんだから!」